
連載「Voice Up Japan Meijiに聴く」では、様々な疑問をVoice Up Japan Meijiのメンバーたちに投げかけます。メンバーとして活動するみんなは、何を考え、どう行動を起こしているのでしょうか?
今回お話を伺ったのは、SNSチームで活躍する楓子さん。難民支援のインターンシップに参加するにいたった幼いころの経験や、インターンでの具体的な活動、難民支援に対する思いなどを話していただきました。
聞き手・編集:かな
話し手:楓子(ふうこ)さん
楓子さんのプロフィール
小学5年生のころにオーストラリアへ渡り、現地の小学校で学ぶ
中学1年生の3学期に日本に帰国し、公立の中学校に編入。以降は日本で学生生活を送る
2018年4月、明治大学国際日本学部に入学
日本で難民支援をするNPO法人でのインターンシップに参加
2020年6月Voice Up Japan Meijiに加入。SNSチーム、貧困問題チームなどで活躍中
目次
Voice Up Japan Meijiでの活動について
日本で難民支援をするNPO法人でのインターンシップ
Voice Up Japan Meijiでの活動について
Q1 楓子さんが「声を上げたい」と思った理由を教えてください。
国日(国際日本学部)に入って、授業とかで色々なマイノリティについて学んだり、あと私自身、オーストラリアで難民や移民の友達と学んでいたっていう経験があったり。そのうえで、いざ国日の外のコミュニティに出てみると、全然(マイノリティや、難民、移民の問題などについて)知らない人が多いし、そういう話をすると「意識高いね~」とか言われることが多い…。でも国日の人って、そういう知識を持っているからこそ、すごく気を遣える人や優しい人が多いなって思っていて、もっとこういう知識をみんなに知ってもらいたいと思った。でも一人でやる勇気はなかった。というか一人だと、「意識高いね~」って思われるだけだし、全然パワーもないなって思っていたところにVoice Up Japanのお誘いをいただいて、「あ、やってみたいな」と思って始めました。
Q2 楓子さんがVoice Up Japanで活動する上で、心がけていることや、大切にしていることは何でしょう?
Voice Up Japanに入ってから、チームで活動する上で気にするようになったこととして、私たちの団体って、 Slack をメインに使うから文章で伝えることが多いと思っていて。私、普段 SNS を使う時って、ば~って言いたいことだけ伝えて送るっていう感じなんだけど、Voice Up Japanの時は、「どうしたら伝わりやすいかな」とか「どうしたら柔らかい言い方になるかな」とか考えながら打ってることが多いから、「文章の作り方とかを考えるようになった」のは一つ。あとは、SNSチームにずっといるんだけど、「全ての人に選択肢のある社会を目指す」というのがVoice Up Japanのコンセプトだから、「情報発信が偏らないようにする」とか、「言葉遣い」とかも気にするようになってきたなと思います。
最初のころとかと比べると、だいぶ色々な情報を発信できるようになったのかなって最近は思うかも。最初はやっぱりジェンダーのこととかに偏っていたけど、だんだん色々なものを投稿できるようになってきたかな。
日本で難民支援をするNPO法人でのインターンシップ
Q3 このインターンを知ったきっかけ、始めた理由を教えてください。
難民の支援をしたいと思ったきっかけから話そうかな。
私の中で、オーストラリアにいた何年かは結構大きなターニングポイントになっていて。最初の半年間は、英語を第二言語として勉強する子のためのクラスに入っていて、そこには結構、シリアやアフリカ、中国、ミャンマーなどの出身の子がいて、そういういろんな国から来ている移民や難民の子たちと一緒に勉強をしていた時期があって。その時はやっぱり小学生だから、「この子達は移民なんだ」とか「外国人なんだ」とか、そういうことを全然意識せずに生きてた。
あるとき、私の英語のレベルが上がって、もう現地の学校でも大丈夫だってなったから、お家の近くにある現地の学校に転入することになった。そのときに、第二言語を教えてくれていた先生に、「あなたは日本でちゃんとした教育を受けていたから、飲み込みが早くて、半年とかで普通の学校に行けるようになったんだと思うよ」みたいなことを言ってもらって。でも、実際にアフリカからの移民の子のなかには、私より長く、私が来るずっと前から第二言語を勉強するクラスにいたのに、なかなかレベルが上がらないっていう子がいて、そういうのってやっぱり、貧富の差とかそういうのがあるんだなって思ったりとか。あとはクラスメイトとのキャンプの時に、「どうしてこの国に来たの?」みたいな話を小学生ながらにしたんだけど、その時に「お家がそんなに裕福じゃなくて」とか「お父さんに暴力振るわれて」とかそういう理由を話してくれたの。それが、小学生だったのに今でも覚えているくらい衝撃的で、「アッ、同い年なのにそんな経験してる人がいるんだ」みたいに思ったのがきっかけで、すごく難民とか移民のことに関心を持ち続けているんだ。
大学生になった時に「やっぱりちゃんと(難民や移民のことと)関わってみたいな」って思って、難民支援のインターンを探しているって伯母に言ったら、伯母がもともとNPOで働いていたから、「こういうところあるみたいだよ」って教えてくれて知って、応募したっていう感じです。
Q4 インターンには、楓子さんの他にも色々な人が参加していたと思うのですが、具体的にはどんな人たちが参加していましたか?
あんまり深く他の学生と関わるポジションにいなかったから詳しく知らないんだけど、やっぱり(参加した学生が所属する)大学とか学部とかは、国際系が多かったり、あと留学経験のある人が多かったり。進路も、 JICA とかそういうところに就職する人が多かったかな。
Q5 インターンでの具体的な活動内容を教えてください。
ポジションが色々あるんだけど、私はその中で、NPO の代表の補佐みたいな役割をしていて、例えば代表が渉外活動(外部と連絡して交渉を行う活動)をする時に、相手先の人がどんな人なのかとか、どういう考えを持っている人なのかとかをインターネットで調べて、「こういう方なのでこういう話をしたら盛り上がるかもしれません」とかを伝えたり、あとは、イベントのお手伝いをしたり、提携しているところからかかってくる電話に対応したり、難民の人とかから電話がかかってくるのをつなぐことだったりを主にやっていました。その他にも、広報や、難民の人から電話相談を受けるなど直接関わるというポジションなどがあったかな。
Q6 インターンに参加する人は、事前にポジションの希望を伝えるんですか?
そうだね。募集しているポジションもしていないポジションもあるんだけど、自分がどれに参加したいのかを最初に話して、その上で面接をするっていう感じ。
Q7 なるほど。ちなみに面接ではどんなことを聞かれましたか?
一般的な面接で話すような志望理由も話したし、何で難民のことに興味を持ったのかも話したし。あとはやっぱり、NPO法人だから、「今どんな時事問題に興味があるか」とかも話したかもしれない。でも、すごいガチガチな就活の面接みたいな感じではなくて、“会話”を重視する面接だったと思う。
Q8 活動のなかで、「ここでしか得られない経験だな」と思うような出来事はありましたか?
うん、いっぱいあって。一個は、私は難民に関心はあったけど、日本に難民がすごくたくさんいるっていうことはあまり理解していなくて、“海外にいるもの”っていうイメージがやっぱり強かった。だけど、日本にも沢山いるし、その人たちが 本当に大変な思いをしているっていうのを支援している方から直接聞いたり、逆に入管(入国管理局)の方とかとも関わりはあるからどんな思いでお仕事されてるのか、(支援には)弁護士さんが関わっていること、など、そういう裏側というか、普段入り込めないような場所の出来事を感じたり、聞けたりするのは、そこでしかできない経験だった。
あとは、難民の人で、住居を自分で用意できなくて、知り合いとかが日本にいないとなると、ホームレス状態になっちゃって外で泊まっている人とかもいたの。NPOの事務所が入っているビルの前に大きい公園があったのね。本当に泊まる場所がない時とかに、結構そこで集まっちゃっている難民の人たちもいて、「アッ、ここで泊まるの…」と。本当にホームレスになってしまっているという状態を見て、すごくびっくりした。「こんなにひどいんだ日本の状況…」って。世界のことももちろんそうだけど、日本の中の状況もちゃんと知らなきゃだめだなって思った。
それと、メインで電話相談をする方ではない番号にかけてききちゃう難民の人がいてそれの対応とかもするんだけど、そのときに、すごく焦ってる状態で電話がかかってくるから、「やっぱり本当にしんどいんだな」とかが、もう声だけで伝わってくるっていうのが、直でインターンをしないと分からなかったことかな。
Q9 このインターンに参加する前と後とで、難民の方や、難民支援に対する考え方は変わりましたか?
もちろん変わった。マイナスもポジティブも両方かな。ポジティブな面としては、支援を受けられて生活を再建できれば、ちゃんとした社会生活を送れるようになれるんだっていうことが分かって。それって多分日本ならではと言うか、日本という国自体が混乱していないからこそ、支援ができればちゃんとした生活ができるようになるっていうのは大きいと思う。トルコとか、難民の人たちがいっぱい来ているけど、トルコっていう国自体がそんなに裕福ではないから、さらなる困難が生まれるみたいな状況ができちゃっている。だけど、日本はちゃんと支援して保護できれば、ちゃんとした生活ができるんだなっていうのはすごくポジティブに感じた。あとやっぱり、“難民は貧しい”っていうイメージがすごく強かったんだけど、日本に来ている人のなかには、もともと NPO の職員だった人、大学教授だった人とかも結構たくさんいるし、またアフリカ出身の人とかだったら、何ヶ国語も喋れたりとか、すごく優秀な人も全然いるんだなって。「そうだよな、普通に社会で生きてた人達なんだもんな」っていうことを知れた。そこの偏見を持っていたんだなっていうことに気づけたし、その考えを変えられたのはすごくポジティブなところだった。
ネガティブな変わり方だと、私がインターンしていたところは NPO だったから、やっぱり資金繰りはそんなに豊かではなくて、私もすごくたくさん手伝って助成金に応募して、政府からの助成金をもらうために頑張ったりとか、寄付や募金を募ったりとかして、でもそれだけじゃ限界があって。だからこそホームレスの人が生まれちゃったりして…。本当だったら、ホームレス状態でお家がないのであれば、こちらで提供できるように NPO が準備できるくらいの資金があるのがベスト。だけど、すぐに空き部屋を見つけられるほど余裕がある状態ではない。ホームレス支援団体とかと協力して、お家を借りてそこに泊めさせてあげるっていう支援活動もしているんだけど、そこまで支援の資金とかも足りないから、そこに限界はあるなと正直思った。どんなに政府とかに提言をしても、全然現状として改善していないのが事実だなと思うし、世間からの関心もそんなに強くはないなぁというのは実感した。
私もオーストラリアに行っていなかったら多分インターンをしていないし興味を持っていないし、全然今まで難民と関わったことない人にどう届けるのかが、難しいなってすごく思ったかな。
Q10 世間からの関心っていうのがすごく大きいと思うのですが、世間から関心を集めるためには具体的にどんなアプローチが必要だと思いますか?
私は個人的にだけど、すごく「体験」が大事って思っているから、実際に難民の人と出会うっていうことがないとなかなか自分ごとにならないんじゃないかな。ジェンダーのこととかも、私が国日に入って出会えたから考えるようになったけど、そうじゃなかったら考えなかった。だから、「出会うのが一番良い」って思うけど、ただ難しい問題として、難民の人ってそんなに前に出たがらないというか、出られない現状があって。やっぱり社会からの目も厳しいし、あとはメディアとかにもし出ると、政治的な理由とかでこっちに来ていた場合、そのメディアに出ていることが母国に知られると、母国にいる家族とかが危ない目に遭っちゃったりすることもあるらしくて、実名を出してメディアに出ることとかも難しいみたいで。だから広報の方法とかも難しいんだよね。ちゃんと顔出ししてインタビュー記事を載せるとかが本当に難しい…。
どうしても、税金を使って保護しているのは事実だから、それに対する国民のバッシングみたいなのが強いっていう現実があるみたいだね。
Q11 乗り越えなければいけない課題はたくさんあると思うのですが、今後日本で難民の支援はどうなっていくべきでしょうか?
うーん…難しいよね。それはほんと難しいと思う。実際、ヨーロッパでは大量に受け入れすぎて支援できないという現状もあるから、たくさん受け入れればいいってものじゃないっていうのは分かる。日本の入管のニュースとかを見てもらえれば分かるけど、「まずは人として扱ってください」ていう感じだよね。本当に。入管施設では全部監視されていて、(難民の人たちが)病気になっても「(外に)出たいから嘘ついてる」とか言われたりして、それって刑務所じゃん…。確かにビザは切れているけど、刑務所でもそんなひどい扱いされないのに、外国人ってだけで、人権侵害が過ぎるわ…って思うかな。受け入れ数を一気に増やしてほしいとかは言わないけど、「せめて来た人の人権は守ってほしいな」って思います。
あと、国内で難民支援をしているNPOとかの団体で有名なところは二つくらいしかないから、やっぱりもうちょっと興味を持つ人がいれば、もっと体制は変わるのかなって思う。
(聞き手・編集のかなより)
私も、難民の方を、同じ“人”として扱うっていうのは本当に大事なことだと思うし、それだけは絶対守られなきゃいけないなと思います。
実際に難民支援の最前線で活動されていた楓子さんからお話を伺い、支援の現状を知り、何が求められているのかや、社会の動きを変えるにはどうしたらよいかを考えるきっかけとなりました。ありがとうございました!
★ここまでお読みいただきありがとうございました。Voice Up Japan MeijiのSNSでは、難民や、難民支援について考えるきっかけとなるような投稿をしております。そちらもぜひご覧ください!
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