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  • 執筆者の写真Kana

世界の若い世代は、政治・選挙にどう向き合ってる?~韓国出身のメンバー、ナヨンさんに聞いてみた~



7月10日は、参議院議員選挙の投票日です。

投票の日をまえに、自分と同じ世代の世界の学生は、政治や選挙のことをどう考えているのだろう?と知りたくなりインタビューを企画しました。


# みんなの選挙プロジェクトの記事は、今後も続けて投稿する予定ですので、そちらもぜひお読みください!

 

ナヨンさんのプロフィール



2020年4月 明治大学 情報コミュニケーション学部に入学

2021年12月 Voice Up Japan Meijiに所属し、現在はイベントチームで活躍中



話し手:ナヨンさん

聞き手、編集:かな



ナヨンさん自身のことについて



Voice Up Japan Meijiに入ったきっかけは何でしたか?



 高校のときからジェンダー問題に興味があったんですけど、高校ではジェンダーの授業とか全然なかったので、自分で本を買って読んだりして。

情コミ(情報コミュニケーション学部)を選んだ理由もジェンダーの勉強ができるからで、学校でもジェンダー関連の授業とか、ジェンダーのゼミとかに入って色々なことを学んで、「こんなことについて誰かと話したいな」とずっと思っていました。

ですけどこういう話って、他の授業で会った友だちとは日常的になかなかできないなと思って。「どうすればいいのかなぁ」と悩んでいた2年生のときにいとはな(明治支部のメンバー)と出会ったんですけど、いとはなにVoice Up Japanのことを教えてもらって、ちょうど12月に申し込みできるよという(インスタの)ストーリーが上がっていて、「じゃあ入ろうかな」と思って入りました。



ジェンダーの授業以外の友だちと、ジェンダーや、他の社会問題を話せる機会はあまりないですか?



 そうですね。韓国人の留学生とか、同じ学部の留学生、韓国にいる友だちとかは結構みんな興味を持っていて。

高校は女子校だったんですけど、結構古い私立高校だったので、先生とかの発言に結構問題があって、高校の友だちはみんな、フェミニズム問題とかに興味を持っていました。

同じ学部の留学生も、留学生の入試の試験のなかで小論文があったんですけど、その問題文が、上野千鶴子先生の東京大学入学式の祝辞だったので、多分合格した人は問題意識を持っている人なのかなと思って。

実際に、興味を持っている留学生の人は結構いました。韓国にいる友だちとか留学生の友だちとかとはよく話したりするんですけど、学校で出会った他の日本人の友だちとは、全然できないと思って…。

みんな興味を持っていないというか、あまり問題視していないという感じがありました。



そうだったんですね。ジェンダーなどについて、高校の友だちや日本に来てから出会った韓国人の友だちのなかでは話すけれど、日本の学生は反応が薄いというか、あまり興味がなさそうという感じだったんですね。


今のお話を聞いて、韓国の学生と日本の学生とで、社会問題に対して意識が全然違うのかなというふうに思いました。これから政治についてもお聞きしたくて、韓国の若い世代と政治というテーマに移っていこうと思います。



※2019年の東京大学入学式の祝辞。フェミニズムの先駆者である、同大学名誉教授の上野千鶴子先生が話された内容が話題となった。




韓国の若い世代と政治



今年の3月に韓国で大統領選がありました。20代の投票率が65.3%、30代では69.3%、全体では77.1%という結果が出て、私はこれを見たときに「日本と比べてすごく高いな」と思ったのですが、ナヨンさんはこの数字をどう見ましたか?



 私も結構高かったなと思っていて、特に20代が高かったという気がしました。今回の大統領選って、結構フェミニズムが盛り上がって話題になったじゃないですか※。

フェミニズムは、20代のなかで話題になっていて、それも原因なのかなと思います。

あと、韓国には大学生が使うアプリがあって、自分が、例えば「明治大学に通っています」っていう在学認証をすると、明治大学生が集まっているアプリのなかのコミュニティに入れて、それで、学校生活について話したりできるんです。

韓国の友だちに話を聞いてみたら、アプリのなかの掲示板みたいなところで、「今回の選挙はどうなるのかな」とか「この候補はこんな話をしていたけど大丈夫なのかな?」とか話があったらしくて、大学生のなかでも今回の選挙をみんな興味を持って見たのかなと思いました。



そうなんですね!初めて知りました。それは、匿名で参加できるアプリなんですか?



そうですそうです。



そんな場所があると、学生の間で政治について活発に意見を言い合えますね!



どうして韓国の若い世代は、政治にそこまで高い関心を持っているのか、それには何か理由があるのかな、と気になります。何か思い当たるところはありますか?



 2016年に、大統領の知人が国政に介入した事件があって、それによって起きた様々な不正行為のひとつに、知人の娘さんの大学不正入学があったんです。その人は入学後も、出席や単位取得と関連して多くの不正行為を起こしたので、入試や成績に敏感な韓国の、とくに中学生、高校生たちはデモに出始めました。

当時(私は)中学生だったんですけど、学生はみんなそれに怒っていたのと同時に、「政治に興味を持たないとこういうことが起こるんだ」ということをそのときに感じて、興味を持ったのではないかと私は思います。



自分とライバル関係になるはずの人が、権力によって裏口入学という不正行為をしたことが、若い世代を奮起させたんですね。政治に興味を持たなければ、自分たちに不利益があると。



 そうですね。そのときに、大統領が住んでいるところの前とかでデモがあったりしたんですけど、中学生や高校生が、「学生もこんなに怒ってますよ」ということを示すためにわざと制服を着てデモに出たりもしていました。



韓国で中学生、高校生が声を上げるときは、SNSでの活動がメインになるんですか?それともそのデモのように、外に出て声を上げることもよくあるのでしょうか?



そうですね。主な活動はたぶんネット上だと思いますけど、そのときは、毎週土曜日と日曜日に国民のみんなが集まるところでデモがありました。

SNS上で、「一緒にここで集まりましょう」と(呼びかける)学生団体みたいなところがあって、みんな外に出て声を上げました。



日本ではデモがあったとしても、結構小規模だったり、学生主体のものはあまり多くなかったりして、外に出て実際に声を上げる動きは活発ではないと感じています。そこが韓国と日本で違うところですね。



※大統領となった尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏は、選挙期間中、「女性家族省」の廃止を公約に掲げ、反フェミニスト的発言を繰り返していたと報じられている。




韓国の学生はどう政治を学ぶ?



中学、高校のときから、政治に対して声を上げる人がいるそうですが、韓国で、若者がどのような政治教育を受けているのかが気になります。



 小学校のとき「社会」という科目があるんですけど、小学校と中学校のときは、この科目のなかに政治のパートがあって、そのなかで選挙とか国会議員とか大統領とかについて勉強したりしていました。

高校のときは、2年で文系と理系に分かれるんですけど、文系の人は、日本のセンター試験みたいな入学試験のときに、文系の社会科目のなかでふたつを選んで試験を行うんですけど、そのときに、科目のなかで「政治と法」という科目があって、これを選択した人はもっと深く勉強できたと思います。



授業中に、例えば政治とか、社会問題とかに関するディスカッションの機会はありましたか?



 それは多分先生によって違うと思います。通っていたところが本当に古い私立高校だったので、年配の先生とか、あまり授業に情熱を持っていない先生とかもいらっしゃって、そういう先生は教科書のなかの話だけをして終わるということもありました。

でも、中学生のとき、さっき話した大統領の色々な不正行為があったときに、担任の先生が今回の問題について触れて、「〇〇だから政治に興味を持った方がいいよ」とか話していて。社会科目の先生も、参政権に関する映画とかを見せてくれて「参政権は頑張って得た権利だから大事にしてね」といった話をしていたことがありました。



中学生、高校生のころから参政権について学ぶのはすごく大切なことだなと思います。日本でも政治の授業はありますが、例えば選挙に関して学ぶと言っても、“模擬選挙をやってみる”という方向にいったりして、“実際に自分が政治に参加する”、“党を選ぶ”、“候補者から選ぶ”ことに実感が湧かないのでは?と疑問を持っています。

なので韓国で、一歩踏み込んだところを学べるのは良いなと思いました。



 でも本当に、科目の先生によって結構違うってことはありますね。



そうなんですね。ナヨンさんが通っていたのとは別の高校では、また違うやり方で政治にアプローチしていたかもしれませんね。




選挙について



これから日本で選挙があるので、選挙のことにも触れたいと思います。

韓国では選挙日が休日になると聞いたのですが、それ以外にも韓国の選挙ならではの特徴は何かありますか?



 日本の選挙って、「(候補者の)名前を書く」という形だと思うんですけど、韓国は「ハンコを押す」っていうやり方になっていて、投票するときに使ったハンコを、自分の手とかに捺して、それを写真に撮って自分のインスタのストーリーに載せたりとかすることがあります。

でも今は、コロナの関係で衛生的に良くないということもありまして、手に押す代わりに、めちゃくちゃ可愛いイラストとかを描いて、そこにハンコを捺してストーリーに載せたりすることもありますし、選挙するところの前に、長くて大きな「ここは選挙場です」みたいな紙が置いてあるんですけど、あれの前で一緒に写真とかを撮って(SNSに)載せたりするということは当たり前にやっています。その写真とかをカフェに持っていくと割引をしてくれたりするところも今回(の選挙で)ありました。



ハンコを手に押した様子。「認証ショット」と呼ばれている。(cr. ナヨンさん)


ユニークなイラストのなかに押すスタイルも。(cr. @s2nolangs2‬⁩ さん)




韓国では結構、選挙に行くことは当たり前で、それをカジュアルに楽しむ雰囲気があるんですね。



 そうですね。むしろ“写真を撮るために選挙に行く”みたいなことまでなっちゃって。大統領選のときに、みんな写真を載せていたからストーリーが(ハンコの写真で)赤くなっていました。



そうなんですね!楽しみがあると、投票に行くっていうハードルがぐんと下がりますね。



実際に投票をする前に、どの候補者にするのかをまず選びますよね。最近日本では、自分の考えと一番合っている政党を知るために「マッチングサイト」を使う人も出てきているのですが、韓国では、候補者を選ぶときに何を基準にしますか?あるいはどんなツールを活用しますか?



 候補者のポスターとか、公約が書かれている「公約集」が全国民の家に配られるのでそれを見たりしますね。公約集の一番うしろには、どこで投票をするかということまで書かれていますので、それは多分みんな確認するのかなと思います。

マッチングサイトの話を聞いて調べてみたんですけど、マッチングサイトが前はあったらしいです。「候補者〇〇とあなたの相性は〇%です」みたいなことを出してくれるサイトが昔はあったようなんですけど、今はあまり使わないのかなと思いますね。主にポスターと公約集だと思います。



そうなんですね。そういったアプリとかサイトとかは、若い世代がつくって運営していたのでしょうか?



そうですね。20代、30代の人が多くいましたね。



韓国では、「この候補者がいいんじゃない?」とか「誰に投票した」とかいう話を、例えば家族や友だちの間でしますか?



 自分が支持する党とかを話すと最後はケンカになっちゃうというのがあって…(笑)一番大きい政党を「一番」というんですけど、「一番」を支持する人と「二番」を支持する人って結構真逆な傾向があって※。

友だちだったら話せるかもしれないんですけど、会社のなかとかは、絶対ケンカになるのかなと思います。

韓国で、結構おじいさんやおばあさんは、例えば私が「一番」を支持しておじいさんおばあさんが「二番」を支持していたら説教されるとか…影響が結構ありまして。

あまり話はしないんですね。するとしても、本当に親しい関係の人とかになります。



日本でも、それぞれあまり話さず個々で調べて投票に行く、みたいな傾向が強いかなと思うんです。私の家でも、誰に投票したかとかをほとんど話さないので、そこは結構似ているところかもと思いました。

ですが、話したとしても「ふ〜んそうなんだ」で終わってしまうような気もするので、そこは韓国と全く違うところかなと思います。



※候補者は、所属する党の国会での議席が多い順で、一から番号を与えられる。最も議席が多い党が「一番」、その次が「二番」という呼ばれ方をする。

現在は、比較的革新の傾向がある党の議席が一番多く、保守の党が二番目。




日本の同世代に伝えたいこと



これから実際に日本で選挙があります。韓国で、大統領の不正行為を目の当たりにして、政治にちゃんと関心を持つべきだと考えているナヨンさんから、日本の若い世代に対して、今回の選挙に関して伝えたいことはありますか?



 そうですね。私は、国会議員によって私たちの日常がほんとうに変わると思います。あの人たちがどんな公約をつくって、どんな法をつくってというなかで、日常が、人生が真逆になっちゃうかもしれないので、みんな興味を持ってほしいってこと。

あと私は外国人ですので日本で投票はできないんですけど、投票に行かない人の参政権をもらって投票に行きたいといつも思っているくらいですので、ほんとうにみんな興味を持って行ってほしいですね。



投票所で受け取ることができる「投票確認証」(cr. ナヨンさん)



そうですよね。日本にいるすべての人が投票に行けるわけではないということを、誰もが心にとどめておく必要があると思います。



 もし20代の人があまり投票に行かないということになったら、国会議員の方も、20代の目線で考えてくれないと思いますし、本当に生きづらい社会になるかもしれないと思います。

投票っていうのは、私たちが国家に意見を言える唯一の場だと私は思っていますので、ここで投票しないと、「私の権利を奪ってもいいよ」ということになっちゃうとずっと思っていて、だからみんなに行ってほしいです。



よく分かります!私も出来る限り、選挙に行こうと伝え続けていきたいと思います。今日のインタビューは以上になります。ありがとうございました。




~編集後記~


ナヨンさんにお話を伺い、韓国の若い世代が、政治や選挙を“日常的なこと”として捉えていることが伝わってきました。大学生のコミュニティのなかで政治の話が出たり、インスタのストーリーで「投票行ったよ」ということを楽しくシェアしたり。そのベースには、「政治に関心を持たなければ、自分たちが不利益を被るかもしれない」という危機感があり、政治を“自分ごと”だと多くの若い世代が捉えていることが分かりました。


一票を投じることに、あまり意味が見いだせないという人もいるかもしれません。ですが、ナヨンさんも話していたように、投票しないことは、権利を自分から手放してしまうこと。


たとえ今すぐに政治が大きく変わるわけではないとしても、20年後、30年後の社会が、自分にとって少しでも生きやすい社会になるために、私たちは投票に行く必要があるのではないでしょうか。


参院選の投票日は7月10日です。今回のみならず、選挙はこれからも何度もやってきます。投票という形で、自分たちの声を伝え続けていきませんか。




★明治支部のインスタの投稿とストーリーでは、候補者選びに活用できる投稿やサイトなどを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください!


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