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多様性と共に、自分を生きる(前編)

執筆者の写真: ハナハナ


 連載「Voice Up Japan Meijiに聴く」では、様々な疑問をVoice Up Japan Meijiのメンバーたちに投げかけます。メンバーとして活動するみんなは、何を考え、どう行動を起こしているのでしょうか?

 今回は、2021年6月まで翻訳チームのリーダーを務めたひーちゃんにインタビューをしました。前編・後編と2回に分けてお送りしますが、この前編では、アメリカの大学の寮で、一緒に暮らすルームメイトがレズビアンだと会う前に発覚したこと、そんなルームメイトと極寒の冬を部屋で楽しく過ごしたことなどなど、アメリカ留学の話を聞きました。



聞き手・編集:ハナ

写真:ひーちゃん


ひな(通称:ひーちゃん)プロフィール

  • 2020年12月Voice Up Japan Meiji に加入

  • 2021年6月まで翻訳チームのリーダーを務める

  • アメリカの大学へ行っていたが、コロナを期に休学・帰国

  • 帰国している間は、明治大学の科目等履修生として、国際日本学部の授業を受講

  • 9月からアメリカへ帰り、大学へ復学予定




目次

Q1.アメリカでの生活は?

Q2.ルームメイトはどんな人?

Q3.ルームメイトとの共同生活は大変だった?

Q4.レズビアンの子と暮らすことに、葛藤を持っていたけど、一緒に住んだらその気持ちは変わった?

Q5.体調の悪いルームメイトと暮らすことで、ひーちゃん自身にもストレスがあるかなと思うけど、それとどう折り合いをつけて暮らしていた?

Q6.ルームメイトと暮らして、良かったこと・学べたことは何?




アメリカでの生活とルームメイトとの暮らし



Q1.アメリカの大学では、どういう生活をしていたの?


ひーちゃん(以下、ひー)

私の大学は1年生のとき、全員寮に住まなきゃ行けなくて、だから私も男女共同の寮で16人で住んでた。

6階建ての2階分が私たちのスペースで、部屋は8つに分かれてて、その1つの部屋にもう1人の女の人と2人で住んでた。

でも、すっっごいおんぼろで(笑) 

いつ作られたのかな・・たぶん60年くらい前で、だからすごい汚いんだけどね(笑)


勝手にマンションみたいな新しめなやつ想像してた(笑)


ひー

いや、そんなことない(笑) 

すごい田舎だし、全部古い建物が残っているから。

でも私の大学じゃないけど、ワシントンとかに住んでいる人はねずみとか余裕で出てくるからね。


そうなんだ!けっこう過酷なんだね(笑)

Q2.ルームメイトはどういう感じの人だった?


ひー

高校の時にアメリカに留学したことがあって、そのときに会ったことがある人だったんだよね。

だから、Facebookでも繋がりがあって、大学が決まったら彼女から連絡が来て、「同じ大学だよ!!」って声かけてくれたの。

それで、とんとん拍子にそのルームメイトと暮らすことが決まっていった。

その子は日本に来たこともあるくらい、日本がすごい好きな子なんだ。

日本語を習得したいから、コミュニケーションするときは私は英語で喋って、彼女は日本語で返すみたいな。そういう不思議なコミュニケーションをしてた(笑)



Q3.共同生活って、家族でも喧嘩になったりと大変だったりするけど、全くの他人と暮らすことで、なにか大変なことはあった?


ひー

まず私はひとりっ子で同年代と暮らしたことがなかったから、起きた瞬間に同年代の誰かがいるっていうのがなかなか慣れなかった。


同年代と暮らすことも初めてだったのに、それ以外のことでも初めて尽くしだったのね。

彼女はレズビアンだから、LGBTQIA+の当事者なんだ。それに加えて、ADHD(多動性症候群)を持ってて、で、拒食症だった。


とにかく体調不良の日が多かった。

食べないから、あんまりエネルギーもない。

だから気分の浮き沈みも激しくて、起きてる時間が短いからうまく意思疎通ができなかった。


もうひとつ大変だったのは、私が無意識にLGBTQIA+に偏見を持ってて…


高校時代からLGBTQIA +の人は周りにいたんだけど、クラスメイトとしてのLGBTQIA+だったから、自分でもアライ(味方)になったつもりだったんだけど、理解はできていなくて。


ルームメイトがレズビアンだって知ったのが、一緒に暮らすことを決めてからだったのね。

直接教えてもらったわけじゃなくて、彼女のインスタで知って。プライドマンスのときに旗を挙げていたから気付いた。

「ちょっと待って」と思って、「なんで言ってくれなかったの??」が大きくて、無意識に特別視してしまっていて、そこの葛藤がまず実際に会う前にあったんだ。

実際に会って、一緒に暮らし始めてみると、それに加えて体調不良も多かったんだよね。起きてる時間も少ないから意思疎通もできなくて、「人と付き合うの、けっこう難しいな」って思った。





Q4.彼女はレズビアンだったわけだよね。それで最初は葛藤をもっていた。けど、一緒に住んでみてそこは変わった?


ひー

うん、かなり変わった。なんていうのかな、クラスメイトなら授業でしか会わないけど、ルームメイトだと起きてから寝るまでの一通りの生活を見るわけじゃん。

「私と同じ1人の人間なんだ!」と思って、普通に着たい服着るし、クローゼットにある服も私と似ている。メイクもしたいときにする。それぞれのジェンダーに名前があるから、そこに仕切りを感じていたけど、そんなものはないんだなと気づいた。当たり前のことなんだけど、この気付きは誰もが通る道だと思う。


芸能人や友達みたいな家族じゃない人ならLGBTQIA+でも受け入れられるけど、身内になると受け入れるのが難しいみたいな壁って誰にでもあると思ってて、そこを乗り越えられたのは彼女の生活をみながら、体感していったっていうのもあるかな。



自分と同じだって思えたことが結構大きかったのかな?


ひー

うん。大きかったと思う。

どうしても、LGBTQIA+というまとまりで見てしまうから、それを取っ払うのが難しいよね。

「自分と同じように、生きてるんだ」って実感しないと、取り払えない部分だったのかなと思う。




Q5.その方はLGBTQIA+当事者というだけじゃなくて、ADHDと拒食症を抱えていて、一緒に生活をするのが大変なこともあったと思うんだけど、どうそれらと折り合いをつけてひーちゃんが生活をしていたのかを教えてほしい。


ひー

本人も本人なりに努力していた部分ももちろんあるんだけど、私は「彼女の元気がちょっと出てきたな」って感じたら、「授業行かない?」とか「野菜食べようよ」みたいな感じで、声をかけてた。


自分の意見をそうやって言うことで、私のストレス軽減にも繋がってたし、彼女が外に出る原動力にして欲しかったんだよね。



病気の人が一緒にいると、時には自分にもストレスがかかったり、つらいこともあったと思うんだけど、それをそういうふうに「はい!ご飯食べて―」ってやることによって、ストレスを軽減してたってこと?


ひー

最初は友達に相談してたけど、それじゃあ変わらないと思って。

自分もそれまでは一人暮らししたことなかったけど、「意外と自分で生活まわせるんだ!」って気づいて。

それを強みにして、教えてあげるかんじかな。やっぱ一緒に生活してるから見逃せないよね。

その人が学校復帰するのを見届けてあげないといけないから。

自分のためでもあったけど、相手のためでもあったかな。



えらい・・・


ひー

いやいやいやいや!なんかそのほうが嫌じゃなかった。

自分の居住スペースでもあるから、やっぱりお互いが住みやすいスペース作りしないと。


ただ彼女の話ばかりしてるから、私の話もしておきたくて。


1学期は、私も新しい環境に慣れる時期だったのね。

ダイバーシティと社会の授業(明治大学国際日本学部佐藤郡衛特任教授の講義)の中で、文化変容っていう4つの段階があったじゃん。

あれ聞いていて、自分にもすごいあてはまるなと思った。

文化変容っていうのは異文化で生活する人が体験する段階なんだけど、「接触」・「葛藤」・「危機」・「適応」という4つの段階が順番に来るんだよね。


1学期目は「接触」だった。自分なりに人と交流したり、同年代と一緒に生活を共にしたり、英語力を試したりする時期になるかな。


だけど、私にはできないことが多すぎたんだよね。


小中高と同じ学校に通っていたから、友達作りがわからなくて、その2段階目の「葛藤」の時期に、ルームメイトも私もお互い、落ち着かない日々が続いていた。

本当は部屋に帰ったら、私の話を聞いてほしかったのに、彼女は体調が悪くてそんな状態じゃないし、相談したいのにできないときもあったんだよね。そのことも少し苦しかったかな。



思ったことを話せないって辛いよね。ルームメイトもいたけどさ、残りの14人のメンバーもいたわけじゃん?それよりもその子とすごく仲が良かったの?


ひー

う~ん。そうだね、1番ルームメイトと気が合ったんだよね。アジア人の子とかもいて話はしてたんだけど、ルームメイトと過ごす時間のほうが濃かったかな。


だからなおさら、何か言いたいときに言えない状況っていうのは辛いことも多かった。

だけど、だんだんお互いが生活に適応し始めて、その状況も変わっていった。


ルームメイトは学校生活と体調管理を、私は英語で授業を受けたり、英語で生活したり、人と話してみるとかができ始めた。そうやって、お互いできることが増え始めたからこそ、お互いを褒め合う時間ができた。

「新しい世界に行ってみない?」って、鼓舞しあえるようになったから、2学期目はやっと対等に話し合えるようになったという感じがした。



1学期の2カ月半と休みの1カ月半を過ごして、そこからやっとお互いがバランスを取れるようになったという感じなんだね。


ひー

そうそうそう。しかも冬だったから、冬はマイナス20度にいくくらい寒くて!

自然と、2人とも部屋でいる時間が増えて、そうなると絶対ルームメイトと向き合わなきゃいけないじゃん。

だから、(手で拍手する動作をしながら)「起きて~」ってずっと言ってた(笑)


じゃあ、ある意味、冬っていうタイミングがちょうどよかったのかな?


ひー

そうだね。ちょうどよかったかも(笑) 

趣味もけっこう合って、一緒にジャズバンドやってたりしたから、部屋で音楽奏でたりしてたし、好みとかも似てたから部屋のインテリアを一緒に買いに行って、居住環境を整えてた。





Q6.一緒に暮らしてよかったことや学べたことは何かあった?


ひー

一緒に暮らして良かったこと・学べたことは目の前の人を理解しようとする力がついたことだなあと思ってる。

絶対人間同士って完璧には理解し合えないけど、理解しようと努力することはできるから、それは話を聴くということだったり、身体全体を集中してその人に向けてみたりしてもいいと思う。


あとは「自分がもしあなただったら私はこういうことをする」と思ったりするけど、それを押し付けない。

彼女が自分で解決して帰ってきてくれるまで待つ。「待つ」ってことは、信頼すること。

信じてあげるってこと。彼女が復帰できるっていう可能性を。

それがすごい大事なんだなって思った。







後編に続きます!お楽しみに~





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